パリの老舗レストラン・パティスリー。Roullet Pradier

コーディネート/田中敦子, 写真/Mika Inoué, 取材・文/猫沢エミ

Roullet Pradier
ルレ・プラディエ

6 rue de Bourgogne 75007 Paris
Tél:01.47.05.77.08
Métro:12番線Assemblée Nationale /8,13番線 Invalides
月〜金 / 8 :00〜20 :00 土・日 / 9 :00~18 :30
www.maisonpradier.com

 

150年以上の歴史を持つ、パリの老舗レストラン・パティスリー。

国民議会-Assamblée Nationaleからほど近いブルゴーニュ通り。クラシックな外観が目を引くロレ・プラディエが誕生したのは、1859年。政府要人の多い、官庁街に登場したこのお店は、またたく間にパリ中に名を馳せる有名店へと成長する。パティスリーだけでなく、レストラン(現在2Fはサロン・ド・テと兼用のレストランに)、高級総菜店としても成長し、昔からいっさい味を変えない伝統のルセットによって守られている。しかし、味に手厳しい常連客をつかんで離さないのは、さらなる努力の賜物といっていい。たとえば、この店の人気商品のひとつ、マカロン。前オーナー・Jean- Marie Desfontaines氏は、彼の父君によって作られた、ラデュレの創業以来伝わるレシピをロレ・プラディエで復活させ、現在では本家ラデュレですら変えてしまった手作業によるマカロン生地の絞り出しまでをも、いまだ手作業でひとつひとつ丁寧に作っている。新しい手法を取り入れても、それはあくまでも“さらなる伝統を守るものとして”という姿勢が貫かれ、常連顧客と店の味を守ることが最優先なため、自ら積極的にメディアにも出ることのないプラディエ。その格式ある店を現オーナーのGaël Taïeb氏が、元ラデュレのオーナーでもあった前オーナー・Jean- Marie Desfontaines氏から引き継いだのが、奇しくもロレ・プラディエ創業150周年にあたる、2009年だった。現パティシエ部門のシェフ、Olivier Meminは、10年間名店ストレーで働いた経歴のある実力者だが、彼が毎年コンクールで賞を取っても、あえてそのことを一切公表しないという徹底ぶりに思わずため息が漏れる。2010年にサンジェルマン・デ・プレにもお店を出し、その後パリの様々な場所へ出店を拡大しているロレ・プラディエ。いぶし銀の老舗パティシエ本店へ、ぜひ。

 


(写真右)伝統的なレシピを大事にするルレ・プラディエならではのシックなケーキ達。派手さはないけど、シンプルな美味しさがケーキの表情に出てる。
(写真左)シェフのオリヴィエさんは、実直を絵に描いたような昔気質の職人パティシエ。「自分が大事にしているモットーは、まずお菓子を愛すること、それと伝統を守るために、様々な新しい再構築を試みることなんだ。」と、シェフ。特にあなたのスペシャリテは?という質問に対して「ピラミッド。それとケーク・ブルゴーニュかな?パティスリー・フランセーズの非常に伝統的なお菓子だね。」と、少しはにかみながら答えてくれた。
【Macarons Fours 1個1.40€】こちらが、ラデュレ古来のルセットを今に伝える、マカロンたち。職人の手で、ひとつずつ絞り出されたマカロンは、繊細さの中に、マカロン本来のざっくりした食べごたえのある食感も同時に楽しめる。現ラデュレもたまらなくおいしいが、こうした今ではより地方のパティスリーによって守られている古いルセットに、逆に新鮮味を覚えてしまう。
【Pyramide 4.20€】ピラミッドの形が印象的なこのお菓子も、フランス中のパティスリーでよく目にする伝統ケーキ。甘さ控えめのノワゼットバタークリームを、アーモンドとノワゼットをちりばめたショコラ・オ・レでコーティング。香ばしくて、やはりどこか親しみのある味わい。子供の頃、これを食べていたら間違いなく一生食べ続けるだろうな。
【Eclair Caramel 3.30€】キャラメリゼされた薄切りアーモンドが、絶妙な甘さのバランスを生んでいる一品。シュー生地のほどよい塩味と、中のキャラメル風味のクレームパティシエが相まって、思わず「おいしい!」と顔がほころんでしまう。
【Bombe aux Marrons 6.50€】ロレ・プラディエの顔とも言うべき、まあるい円錐型のボンブ・オ・マロン。20世紀前からある、とても古いフランスの古典菓子で、プラディエでは創業当時と同じルセットを守り抜いている。「使っている型も昔から一切変わっていない。」とシェフ曰く。ショコラブランとスポンジのドームの中には、砕いたマロングラッセを抱いた栗のムースが詰められていて、初めて食べるのにどこか懐かしい味わい。常連のマダムが脇目もふらず、このケーキを注文していた。
【Blanc Manger 4.20€】ここのお菓子は、なんというか、ある意味とても素朴である。厳選した上質の材料を、できるだけそのまま素材の美味しさを生かしきる。こちらのブラン・マンジェもその典型。アーモンドエッセンスがほんのりきいたミルクババロアに、季節ごと果物がちりばめられただけのシンプルさ。口に入れた途端にほろりとなくなってしまう柔らかな食感と、牛乳そのものの美味しさを味わって。

 


 

BONZOUR JAPON Nº 31 [今、一番気になるパリのパティスリー] より

*取材データは最新のものですが、ここで紹介される品物の値段、および各店舗の営業時間・定休日は急に変更されることがあります。また、文章は取材当時のものを使用していますことをあらかじめご了承ください。